マルトリートメントとは

マルトリートメントというのは英語ですが、mal(不適切な)+treatment(扱い、対応、関わり)、つまり、親も含めて、大人から子どもへの不適切な関わりや対応のことを意味しています。

教育虐待もその中に含まれるより大きな概念です。マル、というと、日本語ではマルバツの〇をイメージしてしまいそうですが、ここでいうmal は、×を意味します。 下図を見て下さい。

左側半分:家庭における保護者からのマルトリートメント(従来の虐待やネグレクト)
右側半分:大人から子どもに対する社会的なマルトリートメント
上半分:何かをするという形の虐待(アビューズ)
下半分:何かをしないという形の虐待(ネグレクト)
まん中:広義のエデュケーショナル・マルトリートメント。
    特に教育やしつけを名目としたマルトリートメント。
上半分:子どもの心身が耐えられる限界(受忍限度)を超えた教育の強制。
    やりすぎ教育。行為者は、親や教師を含む大人たち。
下半分:教育の剥奪。教育を受けさせない状態。
左半分:教育虐待。行為者が親。
右半分:社会的な文脈で起きる狭義のエデュケーショナル・マルトリートメント。

エデュケーショナル・マルトリートメントとなる行為

大人が子どもを育てるために役立つ行為だと信じているか、一時的にやむを得ないことだと考えているか、そうする以外に方法を知らない、あるいはないと思い込んでいる行為。

子どもに対する共感性が不足し、人権を尊重しない行為だが、長年、文化に組み込まれ頻繁にみられるため、その行為の重大な侵襲性に気づくことが難しい。

エデュケーショナル・マルトリートメント

力を持たない子どもの立場に身を置いて振り返ることのできない「教育熱心な」大人が起こしやすいマルトリートメント。たとえば、

  • 勉強や宿題の時間を過度に優先して、
  • 子どもが遊んだり休憩したり睡眠をとったりする時間を剥奪し、健康と発達を阻害する。
  • 子どもたちが苦痛なほどつまらない授業を続け、主体的に学ぶ場を与えない。
  • 勉強についていけない子どもに配慮しないまま、ずっと椅子に座らせておく。
  • 問題行動を起こす子どもを人前で頭ごなしに叱責する。

    などの行為である。

参考:『やりすぎ教育』(武田信子 / ポプラ新書 / 2021)