社会的マルトリートメントと心理臨床

主催:日本心理臨床学会(自主シンポジウム 企画者武田信子)

主催者の感想

日本心理臨床学会理事長を指定討論者に迎え、学会の中心的立場にいる先生方に登壇していただいて、学会で初めて社会的マルトリートメントについて扱った記念碑的シンポジウムであった。ブレイクアウトルームから参加者が減ったが、残った方たちの熱量が熱く、アンケート結果にその様子が現れている。非常に充実した会となったことを心から嬉しく思っている。

参加者の声

  • とても有意義なやり取りができました。サポートを期待されている方として、疲弊していることも初めて話せてよかったです。
  • 正直,心理臨床を標榜する方々が,こういう内容をお話するとは思いませんでした。私は,発達障害関係で,ジェネラリストとして心理をしながら,心理士がもっと違う働きをしてほしい,心理士こそ,ケースの核になるはずなのにと思って働いてきたからです。
  • 個別の心理面接はやはり一番基本の関わりだと思いますが、個別で関われば関わるほどそこから先のそのクライエントの生活する場、環境、組織、ずっといくと社会への働きかけの必要を感じて、自分の無力感を感じますが、今日の先生方のお話しから自分にもできることがまだあるように感じられて、励まされました。
  • 僕は心理職としてはまだ駆け出しの身ですが、心理職がカウンセリングルームから飛び出して、社会のいろんな不条理に対して発信していく必要性を強く感じました。参加できたことに感謝します。
  • 漠然と感じていた子供の過労ということや、心理の専門家ではあるけれど出来ることやるべきことはもっと広いということなどが肯定されたように感じられた一方で、では自分は行動出来ているのか、これからできるのかと考えさせられる内容でした。私はまだ院生で現場経験もほとんどないので、今回の話題は心理職を目指す者としてとても大きな問題だと思いました。
  • 先生方のご発表それぞれに、共感させていただきつつ、また勉強させていただきつつ、たいへん有意義な時間となりました。登壇された先生がたの間に流れる、お互いを尊重しつつもご自分の考えを丁寧に伝える、あるいは相手の意見に丁寧につなげるご様子を拝見しながら、まさにこういう力が、多職種を含めたケースワークの時に必要とされていることだと思いました。
  • 興味深いテーマで、色々な角度からお話を聞くことが出来、有意義な時間でした。スクールカウンセラーや、自治体の心理職として働いてきた中で、個人面接しかしない心理士に出会ったことはなく(力量はバラバラですが)、個人的にはそれが心理の仕事かどうかというよりも、この仕事に心理の専門性を活かすとどういう動き方になるかと考える質なので、最初はピンとこないところもありました。ただ、声を上げる、話をすることが苦手な同僚は多いですし、つい得意なフィールドに逃げたくなる気持ちも分からなくはないので、心理士もまだまだこういう批判を受ける状況にあるのだろうなと思いました。法律に疎いのもその通りです。やっぱり、心理学だけでなく、この社会をサバイブする力として、社会制度に強くなければいけないと思っています。
  • 様々な方の話をお聞き出来て、アクションが次の方のアクションにつながっていくことを感じられた時間でした。私自身は、様々な場を知ることを重視して実践を積もうと志向してきました。しかし臨床心理士の研修や心理臨床学会で開催される研究、シンポジウム等を見ると、求められる専門性は個別面接の技法を習得することなのだと感じますし、社会的視座を含めて議論できる場があっても領域ごとに分化されているように感じます。ネットワークの大切さや法律や制度と結び付けた理解が個々の場面では話題にあがっているはずなのに、臨床心理士の大切な一つのテーマとして多く議論されたり、養成課程で重視されているように感じません。心理士自身が、養成課程の多忙さに耐え、過労になって働いている中で、どのように支えられているか、そのような環境をどのように変えられるかを経験しながら、社会的視座と自分との関係を理解し、目の前の方にも同様な観点を広げられるようになると良いように感じました。
  • 素晴らしいご活躍をされておられる先生方のお話を聞かせていただくだけでなく、安心して場に参加できるという体験をさせていただけたことがとてもエキサイティングでした。グループの方が、とても温かくファシリテートしてくださったこともあり、お顔を出せる方もそうでない方も安心して一緒にお話しでき、とても大切な体験となりました。また、話題提供者、司会者、指定討論者の先生方のディスカッションがとても興味深く、たくさんのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。
  • 社会的マルトリートメントの概念を持って物事を見る、という視点がとても大切だと思いました。社会構造的に苦しい状況だなと感じるケースもあるけれど、そのケース独自の問題と捉えてしまうこともありました。そうではなくて社会構造があること、それに対してどんなアクションができるのか、そもそも自分はどう考えているのか、そんなことを考えなければいけないなと改めて感じました。また、若手の意見としては、臨床心理士会に参加しているから支援されていると感じたことはあまりなく、院卒業後どのように自分が研鑽していくのかということを考えるのと、研鑽するための費用がない、という現実に直面しています。今回のコロナ禍の時に一斉休校になった際にSC の勤務がなくなる→時給が出ないのではないかとハラハラした記憶があります。その際に職能集団として守られたという感覚はあまりなかったという点もあります。社会保険に関しても、医師などは医師会の健康保険がありますが心理士は専門職として入れる保険としてはなく、そう言ったことからも社会保険の恩恵を受けられかどうかが職場による状況となっています。そう言った意味で専門家として生きる点で生活の安全が保障されていない点は多々あります。そう言った支援者としての安心安全も考えていきたいと思いました。
  • 社会的マルトリートメントについて意識をしようと思うと、ある意味では自分も加害者であったり被害者であったりする面があると思います。それを認識してどう行動していくのか、痛みも伴う作業もあるだろうと感じます。そう言った意味で、最後に話のあった横のつながりが、専門家集団としてだけでなくいろんな集団の中で大切になってくるのではないかと感じました。
  • とても刺激的なシンポジウムでした。ふだん考えていることと関連することが多すぎて、言葉としてまとめることが今のところできません。自分の経験した現場で気づいてきたことが、実は社会全体に通じる問題なのではないかと危機感を新たにしました。
    開催日時
    2023年10月01日(日)
    10:00-12:00
    講師
    武田信子 石田陽彦 伊藤亜矢子 平野直己 藤原勝紀 
    会場/方法
    オンライン/オンライン
    対象
    心理臨床学会員
    参加者数
    80名

    主催:株式会社 東洋館出版社

    教室マルトリートメントの処方箋

    主催:大東文化大学教育学科

    児童虐待~教育虐待が壊した子どもの「心」~